元旦からは二日酔いの身体に鞭打ってピピ島へ移動した。
ピピ島とは、アンダマン海に浮かぶ小さな島で、レオナルド・ディカプリオ主演の映画「ザ・ビーチ」のロケ地として有名になった島だ。
今回行ったのは、最も賑わうトンサイビーチエリア。
プーケットやクラビーから来る船は大体ここに止まるピピ島の玄関口でもある。
裏通りのような細い道に小さなお店がひしめいていて、歩いているだけで楽しい。
レストランやバーにカフェ、ドラッグストアやコンビニ、ランドリーにカメラショップなど数ヶ月くらいならここだけにいても困らないくらいなんでも揃っている。
何より、目があったら近寄ってくる押し売りやお店へのしつこい勧誘など、ここには一切ないのだ。
自分のペースで何をするにも心地よい、そして便利で不自由がないことに驚いた。
ただ、近所のトンサイビーチの透明度はあまりよくはない。
交通の往来が多いのでしょうがないのだろうが、綺麗なビーチを求めるなら少し移動した方がいい。
自然が険しく徒歩では行けないので、船での移動になる。
エンジン付きのボートで送ってもらうのもいいが、カヌーを借りて自力で行くのもアドベンチャー感があって楽しそうだ。
そんなトンサイビーチの夜はとても騒がしい。
隣の人と会話ができないくらいの爆音が鳴り響くパーティービーチへと変貌する。
ビーチ沿いには同じようなバーのようなクラブのようなお店が連なり、各店ごとに海へ向けて爆音を奏でている。
そのため、ちょうど音の境目にいると”繋ぎの下手なDJプレイ”を聴いているような気持ち悪さがある。
バンコクでの毒素を抜きに来たが、結局爆音と酒にまみれるのは本末転倒。
それでも都会を離れ、南国の島にいるというだけでテンションを一段階押し上げてくれるのは不思議だ。
昔に一度ピピ島に来たことがある。
当時は「ザ・ビーチ」の影響で、幻の島のような扱いだった。
生い茂った木々の隙間から見える誰もいない南国のビーチ、そんな場所を想像して行った記憶がある。
実際、iPhoneのない時代に飛行機を乗り継ぎ、さらにボートでしか行けないという場所は秘境という名にピッタリだった。
現実はというと、そんな秘境を求めてきた観光客がたくさんわけだが、何も知らない僕は「ここが秘境」と納得していた。
「ザ・ビーチ」の公開から四半世紀が経ち、今のピピ島には秘境の面影はない。
すでに何不自由ないリゾート島に完成されている。
しかし、それは秘境として世に出た日から変化を求められるのは運命だったんだと思う。
何もないただの自然を楽しむのは、正直ハードルが高い。
移動には船が必要だし、そこへ行くまでの道もいる。
人が集まれば、当然お店もホテルもあった方がいい。
夜はやることがないから音楽をかけてお酒を提供しよう、となるのは必然である。
この25年で観光客の理想が反映された島、それがピピ島なんだと思う。
うだうだ言ったが、それでも僕はこの島が好きだ。